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ビッグデータの活用事例!企業の取り組み方

ビッグデータの活用事例!企業の取り組み方

ビッグデータとは、膨大なデータの集まりのことです。近年では、IT・デジタル技術や社会情勢の変化によって、ビッグデータ活用の動きが行政や企業を中心に高まっています。しかし、実際に活用した経験がなく、ビッグデータについてよくわからないという方もいるでしょう。そこで、この記事ではビッグデータに関する知識や実際の活用事例をわかりやすく解説します。事例を参考に、ビッグデータ活用の取り組み方を考えていきましょう。

ビッグデータの前提知識

多種多様で膨大なデータの集まりをビッグデータといいます。Webサイトに記載されている内容やGPSの位置情報、SNSの投稿などさまざまです。ビッグデータは、「Volume(量や大きさ)」「Variety(種類や多様性)」「Veracity(正確性)」「Velocity(処理の速度)」の「4つのV」を備えていますが、明確な定義はありません。それまでは活用するのが難しかった動画や音声などのデータや、リアルタイムのデータを蓄積できるのが特徴です。

ビッグデータの前提知識

ビッグデータの内容

ビッグデータを構成しているデータの例としては、以下のようなものが挙げられます。

マルチメディア

インターネット上で公開あるいは配信されている画像や動画、音声など

Webサイト

ECサイトやブログで収集・蓄積される行動履歴や購買履歴、ブログエントリーなど

ソーシャルメディア

XやInstagramなどのSNSに書き込まれる利用者のプロフィールやコメントなど

オフィス

オフィスで作成される文書やメールのデータ、社内のオフィスツールに関するデータなど

ログ

サーバーに自動で蓄積される通信記録やアクセスログ、エラーログなど

カスタマー

CRM(顧客管理)システムで管理される会員データや販促データなど

オペレーション

販売管理といった業務管理システムで生成される取引明細のデータやPOSデータ(販売記録)など

センサー

GPSやICカード、RFID(電子タグ)で検知される位置情報や乗車履歴、温度、加速度など

ビッグデータの構造

多種多様なビッグデータは、「構造化データ」と「非構造化データ」に分類できます。

構造化データ

二次元の表形式で成立しており、かつ表形式への変換が可能なデータです。構造化データにはExcelやCSVの他、販売情報であるPOSデータや顧客データ、在庫、各種統計などが含まれます。表によってわかりやすくまとまっているため、非構造化データと比べると分析や活用のハードルは低いと言えるでしょう。

非構造化データ

二次元の表形式に変換できないデータのことで、規則性がなく一定の形式を持たないのが特徴です。非構造化データは主に画像や音声、動画、テキストなどが挙げられます。加えて、位置情報やSNSのコメント、PDF、センサーのデータなども非構造化データです。構造化されていないため、構造化データよりも分析のハードルは上がりますが、内容に多様性があり活用の幅が広がります。

ビッグデータのメリット

企業がビッグデータを活用することで、新しいビジネスチャンスを得ることが可能です。では、ビッグデータには具体的にどういったメリットがあるのでしょうか。ここでは、4つのメリットを解説します。

ビッグデータのメリット

正確な現状把握ができる

まず、ビッグデータのメリットとして挙げられるのは現状把握のしやすさです。これまでは感覚や経験で把握していた状況を、ビッグデータであれば正確かつリアルタイムで認識できます。また、ビッグデータを活用することで正確な把握が難しい以下のような状況を可視化することも可能です。

市場の動向

需要が高く人気のある製品・サービスが何か

顧客の購買行動

どういった経路で製品を購入しているか、また商品のどの部分に注目しているか

製造現場の状況

作業が安全にできているか、生産性を低下させるような環境になっていないかどうか。機器の不調や故障の予兆があるか

市場や顧客の動向を把握できるため、ビジネス成功への取り組みだけでなく、状況によって改善策や対応策を考えられます。それは、企業にとって将来的に生産性の向上や売り上げのアップ、新たな商品開発などプラスにつながるでしょう。

需要と将来の状況をリアルタイムに予測できる

ビッグデータは現在の状況だけでなく、リアルタイムで将来の予測や需要の分析ができるのが特徴です。例えば、小売業では過去の売上データと天気、休日などを照らし合わせたデータを分析して商品の需要を予測しています。顧客のニーズを予測できると、今後のマーケティング展開につながり、さらには状況に適したリソースの配分も可能です。不要な在庫や人件費を抑えられることは、利益の向上にも影響します。

効果検証の精度が上がる

将来の予測や需要の分析は、マーケティングの展開にも生かせるというのは前述した通りです。マーケティングを行う際は、市場調査や企画に加えて効果の検証も行わなければなりません。ビッグデータを用いることで、より精度の高い効果検証や適切なマーケティングの状況把握ができます。

意思決定の質が高まる

ビッグデータの活用によって、現在と将来の状況を正確に把握できると、それに基づいた意思決定の質を高めることも可能です。ビッグデータを用いず、感覚や経験で現在と将来の状況を把握することは、根拠に乏しく正確であるとは言えないでしょう。これでは意思決定を行おうにも、質が低くなってしまいます。
ビッグデータとして蓄積された情報は、客観的なデータの集まりです。そのデータに基づいた意思決定であれば、客観的かつ正確なものと言えます。つまり、意思決定の質が大きく向上するのです。

ビッグデータの企業の取り組み方

ビッグデータには多くのメリットがあり、うまく活用できれば企業の利益向上につながります。しかし、ビッグデータを活用して効果を得るためには、企業の取り組み方に注意しなければなりません。ここでは、押さえておくべき取り組み方のポイントを4つ解説します。

目的を明確にしたうえでビッグデータを活用する

最も重要なのは、ビッグデータを活用する目的を明確にしておくことです。多種多様な情報が集まっているビッグデータですが、うまく活用できなければただデータが集まっただけのものになってしまいます。目的を定め、その目標をどう達成するのかを考えなければなりません。
では、目的を明確にしたうえでビッグデータを活用するには、どういったデータを収集すればよいのでしょうか。例えば、「去年よりも売り上げを伸ばすために市場へのアプローチ方法と、顧客のニーズを確認したい」という目的を設定したとします。このような場合は、製品の販売状況や市場のデータなどを集めるのが効果的です。また、ビッグデータとして、SNSの投稿やPOSデータの分析を行う方法もあります。

収集したデータはクレンジングする

収集したデータのクレンジングは、ビッグデータを活用するうえで非常に重要です。データクレンジングとは、不正確なデータや破損データ、無関係なデータを特定して洗浄する手法を指し、データクリーニングと呼ばれるケースもあります。データクレンジングによって、企業データの価値や信頼性の向上が可能です。そのままのデータでは品質の悪いものも混ざっており、誤った分析結果を出してしまう恐れがあるため、収集したデータに誤表記や重複、欠陥がないかよく確認しましょう。

適切な手段でデータを分析する

ビッグデータの分析には、以下のようにさまざまな方法があります。

  • AI(人工知能)
  • 機械学習
  • 統計学
  • クロス集計
  • プログラミング言語(Pythonなど)

特に、ビッグデータの分析に有効であると重宝されるのがAIと機械学習です。企業がデータを分析する際は、目的に適した手法を使って行います。また、データの分析後に利活用することを考えて、BIツールを用いて効率化を図るようにしましょう。

データ活用は長期的な視点で行う

ビッグデータの活用時、短期間で効果が得られるものと考えるのは避けましょう。急がず、長期的な視点で行うようにすることが大切です。状況によっては、期待した効果が得られないケースも少なくありません。そういった時は、また別の角度から改善点がないかを洗い出し、次のデータ収集・分析につなげる必要があります。
このような試行錯誤を続けることで、初めてビッグデータの効果が得られるため、データ活用を一度で終わらせず、途中で頓挫させないように取り組まなければなりません。

ビッグデータの活用事例

ビッグデータの概要や取り組み方を確認したところで、実際にビッグデータを活用している事例を確認してみましょう。ビッグデータはさまざまな場面で活用されており、ここで紹介するのは一例になります。

ビッグデータの活用事例

天気予報

ニュースやアプリでチェックする天気予報は、身近で活用されているビッグデータと言えます。具体的には、天気予報そのものの精度向上などです。日本だけでなく国外の気象データを取り込むことで、精度の高い天気予報を可能にしています。
また、気象データの解析による天気予報は、ただ天気や気温を伝えるだけの利用に留まりません。農業では収穫量の予測やリスク対策、ファッションではAIによる気候に合わせたコーディネートなど、幅広く活用されています。

位置情報

位置情報ビッグデータにはGPSや携帯基地局データ、Wi-Fiデータなどが含まれており、さまざまな場面で活用されています。
例えば、観光地で観光客がどのような行動を取っているか状況を把握できます。日帰りと宿泊の割合や立ち寄る人が多い観光スポット、交通手段などを分析でき、人の流れがどう変化しているかも分析することが可能です。
また、特定の場所で人の増加が多くなる曜日や時間帯、年代などを分析することでATMやコインロッカー、自動販売機などの設置を最適化したという事例も存在します。

交通状況の把握

ビッグデータによって、リアルタイムな交通情報を把握できます。人の流れや公共交通機関の状況をデータとして収集することで、渋滞情報に生かされ混雑の緩和につながったのです。高速道路に設置されている電波ビーコンもビッグデータを活用しており、自動車のカーナビに渋滞や事故の状況といった情報を常時提供しています。
電車など路線の混雑状況の予測にビッグデータが用いられたケースもあり、混雑しやすい駅で特に混む時間帯を判断するための取り組みが行われました。今後、実用化を目指す動きもあるようです。

医療情報

医療現場では、AIが分析したビッグデータを活用し、医師の診断や意思決定をサポートするシステムの実験が行われたことがあります。医療情報として活用するビッグデータは、医学文献以外にがん治療のガイドラインなどさまざまです。
また、「ウェアラブルデバイス」で収集・計測したビッグデータも診察や治療に利用されています。ウェアラブルデバイスとは手首や頭などに装着する端末のことで、スマートウォッチやスマートグラスなどもその1つです。ウェアラブルデバイスは睡眠時間や運動記録、心拍・脈拍など健康維持に必要なデータを取得し管理できるため、装着者の健康状態を把握する際に役立ちます。

工場・事業所のユーティリティ最適化

工場を稼働させる製造業において、近年ではIoTの導入が進められており、ビッグデータはIoTと並んで生産性アップや品質管理などに活用されるケースが多くあります。センサーで設備の稼働状況を把握できるため、異常があった時にセンサーが反応し、対策を素早く考えることが可能です。
また、工場設備の稼働状況以外に、稼働率や稼働履歴などのデータを収集し分析すれば、生産性を妨げている要因を把握できます。生産性アップの妨げとなっている障害を確認できれば、稼働率向上のための改善策を立てられるでしょう。計画目標と実績をデータで参照し、課題や問題を洗い出して生産計画の改善に活用することもビッグデータを生かす方法の1つです。

小売業における需要予測

小売業では、さまざまな条件下で商品の需要予測や在庫管理の調整を行わなければなりません。売上実績や消費者の購買行動、天候といったビッグデータを分析することで需要予測は可能です。需要を予測できれば、在庫管理にも活用できます。在庫管理の他にも、発注業務などにデータを利用し、発注業務を効率化させたケースもあるようです。
在庫の最適化や生産量の計画立案など、あらゆる業務にビッグデータを活用する小売業者も存在します。また、ビッグデータは市場予測を高い精度で行えるため、そういった視点からの需要予測もできるのがポイントです。

自動販売機の商品配置

自動販売機の売り上げアップのため、ビッグデータが活用された事例もあります。自動販売機には商品が並んでいますが、売り上げのためには購入者の視線が商品に対してどう動いているかを検証しなければなりません。そこで、視線の動きがデータ化されたアイトラッキングデータを、自動販売機に装置を取り付けて収集し、消費者アンケートの回答データと照らし合わせてデータを分析しました。分析の結果、自動販売機の購入者は視線を左下に向けることが多いと判明し、主力商品を自動販売機の左下に配置すると、売り上げが大きく増加したようです。

オンラインショップのレコメンド

オンラインショップなどのレコメンドにも、ビッグデータが利用されています。レコメンドとは、オンラインショップを利用するユーザーに対して好みに合う商品やサービスをおすすめすることです。閲覧履歴や購入履歴、ポイント利用状況などを分析し、その情報を基におすすめを表示します。ユーザー一人ひとりに合わせて商品やサービスを提案できるため、分析結果に沿った広告の配信も可能です。レコメンドによって、購買率やクリック率が向上したケースは数多くあります。

ビッグデータを活用する際の注意点

ビッグデータは適切に活用すれば大きな効果を得られますが、取り扱いには注意が必要です。具体的には、以下の点を押さえておきましょう。

セキュリティ対策

ビッグデータには多種多様な情報が集まっており、中には重要な個人情報も含まれている場合があります。活用の仕方によってはプライバシーを侵害してしまう恐れがあるため、慎重に取り扱うようにしましょう。
また、不正アクセスなどで情報が外部へ漏えいするリスクもあるため、十分に配慮してセキュリティ対策を行う必要があります。

保守運用のコスト

ビッグデータのボリュームは膨大です。データを保存するストレージだけでなく、データクレンジングで発生する負荷も考えて運用しなければなりません。どういった目的のどのデータを収集するのか、どのように保存して利活用していくのか、保守運用の方針と発生するコストについて明確にしておきましょう。

人材のスキル不足

ビッグデータの活用には、データの取り扱いに長けているデータアナリストやデータサイエンティストといった人材の登用が望ましいと言えます。技術面もですが、ビジネスの面でも高い洞察力を備えた人材であることが重要です。しかし、これらの人材は不足しており、同等のスキルを持った人材を自社で育成する必要があります。

まとめ

膨大なデータの集まりであるビッグデータは、天候や医療、製造業など多様な場面で活用されており、利活用はこれからさらに発展するでしょう。保守運用のコストは発生しますが、正確な現状把握や需要予測など、ビッグデータには多くのメリットもあります。これまでビッグデータを生かせていなかった場合でも、将来的にはデータをうまく活用する取り組みが求められます。


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