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シャシーダイナモとは?仕組み・測定方法を分かりやすく解説

シャシーダイナモとは?仕組み・測定方法を分かりやすく解説

軽自動車・トラックなど自動車やバイクの燃費性能を調べるには、燃費試験や排出ガス試験などを行って、燃費あるいは排出ガスの量を算出しなければなりません。燃費を調べる際は「シャシーダイナモ」という試験装置が用いられます。
車両評価時に必要な燃費を調査するには、シャシーダイナモによる計測が必須です。では、シャシーダイナモはどんな仕組みで動作し、どのように車両を計測するのでしょうか。この記事では、シャシーダイナモの構造やメーターの測定方法、シャシーダイナモの代替装置として普及が見込まれる「インタイヤハウスダイナモ」について解説します。

シャシーダイナモとは

シャシーダイナモとは「シャシーダイナモメーター(Chassis dynamometer)」の略で、自動車やバイクの燃費・動力を測定する装置のことです。略して「シャシダイ」とも呼ばれます。
シャシーダイナモは排気ガス測定試験や燃費を計測するメーターとして、自動車を装置の上に設置しNOx(窒素酸化物)やCO2の総排出量・燃費量を算出します。

ここでは、シャシーダイナモの詳細を解説します。

シャシーダイナモの特徴

シャシーダイナモの測定方法において、ローラー上に車のタイヤを載せて測定するのがシャシーダイナモメーター方式です。シャシーダイナモが誕生したのは20世紀初頭ですが、現在でも自動車開発工程では重要な試験装置として重宝されており、長い歴史を持つ装置といえるでしょう。
シャシーダイナモは日本だけでなく、世界中で燃費測定の装置として使用されています。アメリカではアメリカ合衆国環境保護庁が定めるモード、欧州ではNEDC(New European Driving Cycle)などです。

これまで日本では、「JC08モード」と呼ばれる都市内走行を想定した日本独自の試験方法によって、燃費や排気ガスを調べてきました。しかし、今後は国際的な試験方法である「WLTC(Worldwide-harmonized Light vehicles Test Cycle)モード」への切り替えが進められています。WLTCモードとは、市街地・郊外・高速道路など各走行モードで構成されている国際的な試験方法です。

ダイナモとは

通常、ダイナモとは直流電源で動作する発電機を指します。電装系の部品として、自動車や自転車など幅広い用途に用いられているのが特徴です。ダイナモはエンジンの動力を利用することから、旧車と呼ばれる車に搭載されています。ダイナモによって発電した電力がバッテリーに充電されて電装系の部品に供給される仕組みです。
ただし、ここで述べるシャシーダイナモについては、一般的なダイナモとはまた別の意味で使用される装置であることに注意しましょう。

シャシーダイナモの仕組み・構造

シャシーダイナモの基本的な仕組みは、エンジンから車のタイヤに伝わった動力を計測し、さらにタイヤからローラーへと伝わる駆動力でローラーの速度を制御することです。実際の運転状況を再現するためにタイヤをローラーの上に載せ、ローラーの回転から動力や燃費の測定を行う構造をしています。走行状態に近い条件にするために、規定通りの速度変化だけでなく、エンジンにかかる負荷が走行状態と同じになるよう、状況を再現させるのがシャシーダイナモです。
シャシーダイナモは、モーターをローラーの外側に置くインライン型と、モーターをローラーの間に置くセンターマウント型に分類されます。

シャシーダイナモの測定方法

前述したように、シャシーダイナモを用いた測定方法は対象の車をローラー上に移動させ、回転するローラーから動力を算出します。車のタイヤをローラーの上へ載せたらベルトで固定し、路上で走るようにタイヤを回転させて測定するのが基本的な方法です。路上走行を再現させることで、燃費やエンジン出力の他、速度や加速度などを測ります。
シャシーダイナモで動力を計測する際の測定方法は、「ハブ直結タイプ」と「ローラータイプ」の2種類が一般的です。

ハブ直結タイプ

ホイールを外し、ハブに直接装着するやり方です。直接装着して計測するため、タイヤスリップの心配もありません。負荷も自由に設定できますが、タイヤの脱着を行う必要があります。またタイヤハウスからダイナモが飛び出してしまうため、自動運転車両や自動運転支援車両の試験を行う際は車両によってLiDAR等センサ系の検出を短絡させるなどの車両側システムの改造が必要な場合があります。
ハブ直結タイプの詳細については「ハブダイナモ」の記事でご説明しています。

ローラータイプ

ローラーでタイヤを回転させて計測します。ハブ直結タイプと比べタイヤがスリップしやすいのが特徴です。車高、トレッドあるいはホイールベースなど、車両の状態によっては計測できない場合もあります。

測定の委託

公益財団法人日本自動車輸送技術協会(JATA)や、一般財団法人日本自動車研究所(JARI)などでは、シャシーダイナモによる評価試験設備を活かした各種試験調査を、国や自治体、民間企業などから委託を受けています。また、試験設備の貸し出しも実施しているのも特徴です。
新車には、あらかじめシャシーダイナモによって燃費や排気ガスが測定されますが、購入後に走った車や中古車を買った場合はきちんとした数値が分かりません。自分の車にはどのくらいの動力・燃費があるのか確認したい場合は、大手カー用品店など一部の店舗で測定を委託できます。

シャシーダイナモと走行模擬

試験時は、コース上で車を自然惰行させて実走行と同様の状態を再現させるのがポイントです。シャシーダイナモで計測する際は、エンジンに実走行時と同じくらいの抵抗力が加わるようにします。車に作用する抵抗力は、「走行抵抗」やそれに含まれる「転がり抵抗」「空気抵抗」などです。

シャシーダイナモでよく行われる試験

シャシーダイナモの装置は燃費試験や排気ガス試験を含め、以下のようにさまざまな試験で活用されています。

  • 燃費試験
  • 排気ガス試験
  • 噴射調整
  • 性能・耐久試験
  • 車両の機能・寿命試験
  • 環境(高低温)試験
  • 燃料・ブレーキ・冷却システムの機能試験
  • 電気・電子系統の機能試験
  • 電磁両立性(EMC)試験
  • 排気装置・触媒コンバータ調整
  • 騒音・振動・ハーシュネス(段差などで車体がねじれる際の振動)の試験

主な試験設備

シャシーダイナモ装置を用いる一般的な試験設備は以下の通りです。

  • ローラーセット
  • 車両の固定装置
  • 送風機
  • 電力制御盤と計測制御盤
  • 操作PC
  • リモコン
  • 安全柵

シャシーダイナモの試験の中には耐久走行もあり、耐久走行用の設備は上記に加え、自動運転装置や自動運転計測システム、信号を接続するインターフェース装置があります。設備にある自動運転装置は自動運転計測システムと直接接続され、監視データや仮想ドライバデータといった情報が格納される仕組みです。ネットワークを経由することで、シャシーダイナモの装置にデータを転送できます。
耐久走行は長期で行われる試験です。任意で実施する試験の他、自動車メーカーが独自で行う耐久走行試験などが行われます。また、耐久走行試験用のシャシーダイナモは排気ガス試験用とは異なり、全ての運転条件と性能が試せることが必要条件です。

実走行時と同程度の負荷を加える

車の走行時はさまざまな抵抗力がかかり、それがエンジンへの負荷となるのが基本です。通常の走行時以外にも、加速あるいは減速した際に車の積載物による慣性と駆動輪の回転慣性力が作用し、さらにエンジンへの負荷がかかります。こういった走行時におけるエンジンの負荷状態を再現するために、シャシーダイナモが必要です。シャシーダイナモを使用する時は、装置に設置する試験車のタイヤを介して、エンジンに走行時と同等の抵抗力が加わるように調整します。
しかし、理想はシャシーダイナモでの走行時と実走行時のエンジン負荷が同等になることですが、ローラー上でタイヤを回転させるだけではうまくいきません。具体的には、シャシーダイナモの使用時は車体が静止しているため、実走行で車に作用する風の空気抵抗が得られないことが挙げられます。また、タイヤと地面が接触することで発生する摩擦抵抗も、ローラー上では同等の摩擦が得られません。さらに、車の質量における慣性抵抗についても、試験では車自身が移動しないため慣性抵抗は作用しないのです。

試験におけるシャシーダイナモの役割

試験と実走行時で同レベルの負荷をエンジンに作用させるのがシャシーダイナモの役目です。では、どのようにして負荷を与えるのでしょうか。
シャシーダイナモにあるローラーの回転軸には電気の動力計がつながっており、駆動輪の作用を電気エネルギーに変換して吸収するため、試験車には走行抵抗が発生する仕組みです。ここで発生する抵抗値が実際の走行時と同等になるように、電気動力計の発電量を自動で制御します。減速時の状況を再現する時は、車のブレーキを操作して速度調整をするのが基本です。ローラーに動力計側からの回転力を加えることで、車が前方向に進もうとする力がタイヤに働きます。このように、シャシーダイナモでは実走行時と同じような走行抵抗と慣性力を試験車に与えることが可能です。
シャシーダイナモには、試験車へ抵抗力を与えるために車両重量に応じた等価慣性重量を設定します。等価慣性重量とは、エンジンなどに発生する回転慣性力を加速時の抵抗として、車両重量の増加分を加えたものです。等価慣性重量に応じたフライホイールの組み合わせを決める方式や、動力計の制御による電気慣性方式によって、ローラーに抵抗力が作用するようにシャシーダイナモが機能しています。

負荷制御

シャシーダイナモの燃費・排気ガス試験での負荷制御においては、テストコースで試験車を走行させて走行抵抗を測定します。Nギアで惰行走行した後、各速度域で車の転がり抵抗と空気抵抗を減速時間から計測し、その計測値を標準大気状態かつ無風の数値に補正した上で試験における目標走行抵抗を算出する流れです。
シャシーダイナモでは、車の実走行時と同等レベルの転がり抵抗と空気抵抗、加減速時の慣性抵抗が駆動輪に加わるように動力計が自動制御されます。

走行抵抗とは

走行抵抗とは

走行抵抗とは、車が走行する時に発生する抵抗です。走行抵抗が大きいほど燃費が悪く、小さいほど燃費は良いといえます。では、負荷制御に関りのある走行抵抗には、具体的にどんな種類があるのでしょうか。それぞれの特徴を簡潔に説明します。

転がり抵抗

タイヤが転がる際に、タイヤが変形することで生じるエネルギー喪失によって発生する抵抗です。車の重さやタイヤの種類、路面の状態などで抵抗は異なりますが、大きさは車両総重量に比例します。

空気抵抗

車体の表面と空気との摩擦によって発生し、速度の2乗に比例して大きくなります。空気抵抗は、速度が上がるほど燃料の消費量も大きくなるのが特徴です。なお、車速が時速70km以上になると抵抗はさらに大きくなります。

加速抵抗

名前の通り、車が加速した時に生じる抵抗です。加速抵抗は加速度と車の重量に比例するため、加速度が同じであれば軽い車の方が加速抵抗を小さくできます。一定の速度で走行すると燃費が良いとされるのは、加速抵抗が発生するためです。なお、走行抵抗の中では加速抵抗が唯一ドライバーによるものとされます。

勾配抵抗

勾配抵抗が働くため、車で坂を上る際は大きな力が必要です。勾配抵抗は車両の重力に見なされる力を加えたものになります。勾配抵抗の大きさは速度に関係なく、車の重さと傾斜角度に比例するのが特徴です。

シャシーダイナモの方式

車両試験におけるシャシーダイナモの方式は「機械慣性方式」と「電気慣性方式」の2種類ですが、現在は電気慣性方式が主流です。それぞれどういった違いがあるのか、特徴や利点などを解説します。

機械慣性方式

機械慣性方式は、電気動力計につながった試験車の等価慣性質量に合うフライホイールを選び、ローラーの回転軸に固定して慣性抵抗が車の駆動輪に加わるようにする方式です。車両重量の大きい車を試験する場合はフライホイールも大きくなり、途中で増速機を設置するケースもあります。機械慣性方式の利点は、精密加工されたフライホイールを使用するため、設定する慣性量が確実で時間経過による値の変化もないことです。
しかし、精密なフライホイールの製造が必要になることで、試験設備の費用も上がってしまいます。複数のフライホイールを設置するスペースや、回転軸の固定機構が必要です。また、慣性設定の最大値や最小値はフライホイールのサイズと数で決まってしまうため、近年では機械慣性方式のシャシーダイナモはあまり見られません。

電気慣性方式

電気慣性方式は、機械慣性方式で使用するフライホイールの代わりにダイナモメーターを用いる方式です。ダイナモメーターのトルク(物体の回転時に作用する力)をコントロールし、慣性力に相当する負荷を試験車に加えます。試験時に設定する慣性量が無段階で調整でき、シャシーダイナモの固定慣性量より軽量の車でもマイナス慣性を加えて試験できるのが電気慣性方式の強みです。また、電気慣性のシャシーダイナモとローラーを前後で2組ずつ用意し、タイヤの前輪側と後輪側のトルクを制御する機能を設けることで、4WD車の試験に合わせたシャシーダイナモに応用できます。
電気慣性方式は構造上、設備がコンパクトで場所をあまり取りません。このようにメリットが多いように思える電気慣性方式ですが、慣性抵抗力が電気的に作られるうえ、加減速時のみ作用する特徴があるため、性能確認が機械慣性方式よりも難しいのが難点といえます。電気慣性による吸収負荷量のチェック、ダイナモの制御機能に不備がないかの確認が必要です。電気慣性方式にはデメリットもありますが、近年使用されるシャシーダイナモのほとんどが電気慣性方式になります。
なお、電気慣性方式でのシャシーダイナモについては、自動車技術会(JSAE)が取りまとめる「JASOーE014」にて、性能評価の方法や性能要件などが制定されています。

試験車の駆動式別シャシーダイナモ

自動車には、前輪あるいは後輪が駆動する2WD車と、4つの車輪が駆動する4WD車があります。それぞれエンジンの動力がタイヤに伝わる方法が異なることから、試験設備のシャシーダイナモも構造などに違いが出ることに留意しましょう。なお、シャシーダイナモは自動車だけでなく、バイク用の二輪車用も開発されています。
ここでは、自動車の2WD車・4WD車に分けて設備の特徴を解説します。

2WD車

2WD車の試験では、ローラーの上に車の前輪か後輪のどちらかを設置します。2WD車専用のシャシーダイナモは、ローラーとそれに連結された電気動力計がセットになっている構造です。試験時は安全確保のため、駆動していない方のタイヤ(非駆動輪)をベルトで床に固定する装置を取り付けます。
2WD車のシャシーダイナモ試験は、実走行時との差が多少生まれてしまうことが難点です。これは、実走行では四輪が回転しエンジン負荷が発生するのにもかかわらず、試験時では非駆動輪が回転しないことによる影響が考えられます。ただし、非駆動輪側に生じる転がり抵抗に関しては、四輪が回転している状況が想定された状態の走行抵抗が設定されるため、実走行時と同等のエンジン負荷が駆動輪側に加わる仕組みです。
2WD車で用いるシャシーダイナモを使って、4WD車の排出ガス試験を実施するケースもありますが、この場合は4WD車を二輪駆動状態にしてから試験を行います。

2WD車は、前輪が駆動するFF車と後輪が駆動するFR車に分類されていますが、両者で試験時の方法が多少異なります。
まずFF車ですが、試験車の前輪をシャシーダイナモのローラーに載せるため、車両を後方へ下げて前方に設置している車両冷却ファンを車側に寄せ、試験車と一定の距離を保つようにします。この時、固定されていない前輪のぶれを防ぐため、チェーンなどを用いて動きを抑えることも大切な作業です。
FR車に関しては前述したFF車とは異なり、試験車の後輪をローラーに載せ、車両冷却ファンを後方へ設置します。このため、CVS装置につながる排気導入管の長さやローラー前後のスペースを確保しておかなければなりません。

近年、販売されている自動車は電子制御が進んでおり、前輪・後輪のどれかが走行時に回転していない状態になると、通常の走行が不能になるシステムが作動するケースが多くあります。こういった車を2WD車専用のシャシーダイナモで試験するとなると、排出ガスの試験などができなくなる恐れもあるため注意が必要です。車両試験の委託をしている場所によっては、電子制御機能が搭載された車を試験する際に、4WD車専用のシャシーダイナモを使用するところもあります。この場合、特殊な制御モードとして非駆動輪側のローラーを駆動輪側と同期させ、四輪が回転した状態にして試験を行うのが一般的です。

4WD車

4WD車専用のシャシーダイナモを使用することで、四輪駆動の状態で試験できます。2WD車を四輪駆動にすることで、4WD車向けのシャシーダイナモでも試験を行うことが可能です。
4WD車専用のシャシーダイナモは、ローラーと電気動力計がセットになった構造をしており、試験車の前輪・後輪にそれぞれ2セット独立させて設置します。タイヤの下に設置するローラーには、走行抵抗や電気慣性の制御など、各動力系に対するトルク電流制御が加わる仕組みです。
試験車から見たローラーは、実走行における路面に値します。そのため各ローラーの回転速度は、それぞれが同じ速度になるように制御しますが、これには2台ある電気動力計のトルクと回転を合わせて制御しなければなりません。この制御に何かしらの異変や誤作動があると、試験車に余計な負荷がかかってしまい、燃費を正確に測定できなくなります。また、試験時は車両を固定する必要がありますが、四輪とも回転できる状態で固縛することが車両の飛び出し防止に必要です。

4WD車専用のシャシーダイナモでは、前方・後方の駆動輪が持つ発生力に応じ、前後にある電気動力計の吸収負荷比率を素早く変換します。それに加え、前後の合計値が、転がり抵抗・慣性抵抗・空気抵抗の目標走行抵抗に一致するように制御が働くのが基本です。これは、前後の駆動輪に作用するエンジンの力が、4WD車においては機構や運転状況によって変わってくるためといえます。

ローラーが等速回転するように制御すること、前輪と後輪にかかる合計の負荷が4WD車のシャシーダイナモでは重要です。そのため、等速回転を行うローラーの制御や前輪・後輪への走行抵抗の合計負荷に関して、自動車技術会の「JASOーE014」で性能要件などがまとめられています。また、4WD車のシャシーダイナモでモード試験を行った際、前後等速制御と負荷制御の評価をするために、評価用のツールも自動車技術会によって開発されました。

シャシーダイナモのメリット/デメリット

シャシーダイナモを使用することで、車の燃費や排気ガスなどを測定できますが、シャシーダイナモを用いるメリットは具体的にどのようなものがあるのでしょうか。また、メリットを得られる一方でデメリットも存在することにも注意しなければなりません。ここでは、シャシーダイナモのメリットとデメリットを確認しましょう。

メリット

シャシーダイナモのメリットとしてまず挙げられるものは、試験室内でも実走行を再現した状態で車両の性能評価ができる点です。車両に一定の負荷がかかるようにし、走行時の再現性に優れた環境を整えた上でデータを測定することで、正確な数値を把握できます。近年では電気慣性方式を採用するケースがほとんどであるため、複数のフライホイールを設置する機械慣性方式と比較した場合、フロアレベルより低い位置に設備を置くスペースが小さくなる傾向にあります。
シャシーダイナモは二輪や四輪など駆動方式に分けてある製品が多くありますが、中には2WD車・4WD車の両方を1つの装置で計測できるように開発された製品もあります。製品ごとに機能を特化させたものもあるため、希望に合うシャシーダイナモを探すことも可能です。

デメリット

シャシーダイナモは基本的に二輪・四輪、2WD車・4WD車にかかわらず車両を設置するフロアレベルより低い位置にローラーを設置しなければならないため、基礎や建屋の大規模な工事が必要です。
車の燃費や馬力などを測定したい場合、シャシーダイナモを設置している企業に委託する場合がありますが、測定にはもちろん費用がかかります。測定方法は、ハブ直結タイプとローラータイプでそれぞれ異なるため注意が必要です。また、小型モビリティ、大型車両、四輪以上の多軸車両や特殊車両等はトレッドやホイールベース等の車両サイズ制限などにより計測自体ができない車もあります。

シャシーダイナモの価格

前述したデメリットの項目でも述べましたが、シャシーダイナモは建屋や基礎の工事を含めた場合、非常に高額です。中古品が販売されているケースもありますが、それでも数百万単位の価格が付いています。また、メーカーのホームページなどで製品やそのスペックを確認できますが、価格に関しては問い合わせが必要なところもあるので注意が必要です。メーカーに直接問い合わせる、またはホームページのカタログをダウンロードするなどしましょう。

シャシーダイナモの代替インタイヤハウスダイナモとは

シャシーダイナモの代替インタイヤハウスダイナモとは

当社は、2023年の5月にパシフィコ横浜で開催された「人とくるまのテクノロジー展2023」に「インタイヤハウスダイナモ」を展示致しました。インタイヤハウスダイナモは、シャシーダイナモの代わりとして導入が期待されている新しい車両試験装置です。ここでは、インタイヤハウスダイナモにはどういった特徴があるのか、仕様やメリットなどを解説します。

インタイヤハウスダイナモの仕様

当社が開発するインタイヤハウスダイナモの主な仕様は以下の通りです。

  • 最高回転数:2,000min-1
  • 最大瞬間トルク:1,350Nm
  • 装置外形:650mmφ(18inch対応)
  • トレッド幅:185mm
  • 対応ブレーキロータ:16inch
  • 許容荷重(1基あたり):600kg

インタイヤハウスダイナモの仕組み・構造・測定方法

従来の車両試験で用いられているシャシーダイナモは、設置に大掛かりな工事が必要で、一度置いてしまうと後からの移動が困難です。また、シャシーダイナモ本体の価格に加え、設置費用も大きくかかります。
これに対しインタイヤハウスダイナモは、車のタイヤを外して装置を取り付ければ計測を行える機械です。車のタイヤ部分に装着できるため、限られた空間でも問題なく計測ができます。

インタイヤハウスダイナモのメリット

インタイヤハウスダイナモをシャシーダイナモの代わりに導入することで、さまざまなメリットを得られます。具体的なメリットは、主に以下の5点です。

装置の取り付け

インタイヤハウスダイナモは、タイヤホイールを交換する要領でフロアジャッキなどを利用して簡易に装着できます。シャシーダイナモは方式によって計測できない車両もありますが、インタイヤハウスダイナモの場合は専用のアダプターを使用することで多様なハブに対応できるため、さまざまな車種に対応可能です。

省スペースの実現

インタイヤハウスダイナモは大きなスペースを取りません。平面の空間であれば、どんな場所にも装置を設置できます。従来のシャシーダイナモのように、設置のための大掛かりな建築・基礎工事も必要ありません。必要最低限の耐荷重があれば2階以上のフラットなフロアでも設置できるのがインタイヤハウスダイナモの特徴です。

適用車種の多様性

インタイヤハスダイナモはレイアウト自由度が高く、適用可能な車両のトレッドやホイールベースに制限が無いため、小型モビリティ、大型車両、四輪以上の多軸車両および特殊車両など様々な車両の試験を実施することが可能です。また方針が未確定な車両開発においても適用することが可能です。

静粛性の向上

装置から発せられる音についても静粛性が向上しています。冷却に水を用いることで、ダイナモの騒音値を約70dBまで下げることを実現させました。そのため、試験中でも車両が出す音をチェックできます。また、タイヤを取り外すためロードノイズが発生しないのもインタイヤハウスダイナモのメリットです。

高い安全性

インタイヤハウスダイナモはハブ直結方式で車体に水平方向の力を発生させないため、固定ベルトなどの車体固定用装置が不要です。また回転部を露出しない構造となっていますので安全柵などの対策が不要です。
さらに実タイヤで走行しないため、長時間に及ぶ耐久試験時のタイヤバーストの心配が不要です。

インタイヤハウスダイナモのご相談なら東洋電機製造

東洋電機製造(TOYO DENKI SEIZO K.K.)では、モーターメーカーとして自動車試験システムや発電・インフラシステムなどを開発・製造しており、車両試験への将来的な導入に向けて、インタイヤハウスダイナモも開発しています。
シャシーダイナモの代替を目指しているインタイヤハウスダイナモは、試験の際にタイヤホイールを外して装置を取り付ける方法で測定する機械です。当社では、インタイヤハウスダイナモのブラッシュアップを重ねており、電動化車両、自動運転車両および自動運転支援システム搭載車両など様々な先進車両開発への対応などさらなる進化を目的に開発を進めています。インタイヤハウスダイナモに関する問い合わせであれば、一度東洋電機製造にご相談ください。

まとめ

自動車の燃費や排ガス量などを計測するには、シャシーダイナモが必要です。しかし、シャシーダイナモはかなり高額であるため、個人が愛車の燃費を調べたい時は専門店などに持ち込んで計測してもらわなければなりません。計測時の方法は、ローラーでタイヤを回転させるローラータイプと、ホイールを外して取り付けるハブ直結タイプが一般的です。
シャシーダイナモは自動車の2WD車・4WD車用の他、バイクの二輪車用も開発されています。シャシーダイナモを使用した車両試験では、機械慣性方式あるいは電気慣性方式の2種類から試験が行われますが、現在は電気慣性方式が一般的です。
現在、シャシーダイナモの代替としてインタイヤハウスダイナモの開発が進められており、今後さらなる進化が期待されています。


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